KARAO's Web Special
「イマドキ音楽データブック」
〜CDのプライスって?
2001/05/08掲載

◆ ネット配信の業界標準は「350円」
東芝EMIの参入で注目を集める「有料音楽配信」ですが、各社を比較するとおもしろいことに気が付きます。
▼ 主な配信サイトと楽曲例(価格は4月13日現在)
会社名サイト名楽曲名価格
ソニーミュージックbitmusicゴスペラーズ
「ひとり」
350円
エイベックス@music浜崎あゆみ
「NEVER EVER」
350円
東芝EMI・
ワーナーミュージックなど
du-ub.com椎名林檎
「真夜中は純潔」
350円

上の表に代表的な3サイトをあげてみましたが、1曲あたりの価格は見事に「350円」で統一されています。それぞれ別の企業が運営しますし、アーティストも3者3様なんですが、このあたりがどうもネット音楽配信の業界標準になっているようです。
◆ 右へならえ?CDアルバムの4割は「3059円」で統一
ネット配信と同じように、一般に販売されているCDの値段もおもしろいように統一されています。試しに、今年3月にリリースされたCDのうち、カラオが新譜として掲載した作品について価格を調査したところ、以下のような結果となりました。
▼ 2001年3月新譜の価格分布
シングルアルバム
1050円19.1%3059円43.2%
1260円19.1%3045円9.1%
1223円18.2%3000円5.7%

たった1ヶ月の、しかもカラオでとりあげた新譜についてのみのデータなので全体を網羅している訳ではありませんが、リリースされたシングルの約4割は1050円か1260円、アルバムについては43%が3059円という価格だったことになります。3045円という価格設定も加えると「2枚に1枚は3045円か3059円」という計算になります。

シングルの場合、リミックスの大量収録といったケースを除けば曲数はそれほど変動がありませんが、アルバムの場合曲数は1桁もあれば2桁も、と幅広いはず。もっと言えば、シングルを集めただけのシングルコレクションと、アルバムのために制作された新曲を数多く収録したオリジナル盤の価格も同一、というのは何となくすんなりこないものがあります。
◆ CD不況は「ケータイ」だけのせいなのか
CDが売れなくなったのは若者が携帯電話にお金を使ったため、という分析がよくなされています。これは、支出にしめる通信費の割合の増加といった面を捉えるとかなり的確なものだと思います。でも、本当にそれだけでしょうか。

「牛丼が250円」「ハンバーガーは平日半額」といった例を出すまでもなく、バブル期に比べ格段にモノが安くなった昨今、消費者は一段と「値段」に敏感になっています。食費だけでなく、衣料や雑貨など、ほとんどの商品が安くなっている感じすらある中、CDの価格は下がることなく逆に上がる傾向すら感じさせています。

もちろんCDは、ハンバーガーのように半額にすれば何倍も売れるといった性格の商品ではないでしょう。ただ、3059円では手が出なくても、その半額の1480円なら買ってもいいかな、というユーザーは結構多いような気がします。
◆ 「文化」の二文字で同一価格を維持
CDは雑誌や新聞と同様「著作物の再販売価格維持制度」という仕組みによって、同一商品であればいつ・どこで買っても同じ価格で販売されています。これは、価格競争だけでは売れ筋だけが大量生産され、あまり売れない商品は店頭から姿を消すおそれがあるといった文化的側面から、当面今後も維持されることが決定しました。

ただ、この「再販制度」は、メーカー側が販売店に対して定価販売を義務づけることができる制度であり、競争を阻害するといった意見もあります。

現に、カラオがウェブ上で実施したアンケートでは、CDの値段は今後も「どこで買っても同じ」でよいと答えたユーザーは25%にすぎず、販売店が独自に価格設定を希望する声が圧倒的でした。
◆ 同一価格で「オマケ」まで買わされる?
ただ、現実問題として「同一価格」とは言い切れなくなってきました。量販店における「ポイント還元」などは、価格自体は値引きしないものの、次回の購入時にポイント分を差し引いた価格で購入できるため、実質的には値引き販売に近いでしょう。

さらに厄介なのは、CDの購入時にもらえる「特典」モノ。ポスターを筆頭にさまざまな特典がもらえる場合がありますが、ショップによって特典が違ったり、特典のある店とない店があったりします。一見「もらえてラッキー」と思いますが、これは同一価格制度が生み出した産物とも言えるんです。

なぜかというと、実はあれ、レコード会社側が無料で提供するわけではなく、ショップが購入しているんです。値引き販売ができないショップにとって、価格では差別化ができないのでオマケで釣ろう…、と考え自腹を切っている訳です。

オマケに対する出費を抑えて価格をその分安くすればまるく収まるハズなのに、それができないのでああいった歪んだかたちになっているんですね。

CDとオマケの抱き合わせ販売、これは通販で「包丁を買うとナイフがついてくる」といって販売価格を釣り上げる方法に似ているような気もします。

このように、ポイントとオマケによる「実質値下げ」が行われる都市部の大型店と、そうでない店ではすでに差は大きく、文化うんぬんどころではない状態になっている部分もあります。
◆ 「新人なので安く」というのもアリでは?
このように商品としてのCDや、楽曲データとしてのネット販売の価格はかなり硬直しています。でも、CDの販促という観点で、価格という武器を使うのもアリなのでは、と思います。

例えば新人アーティストの楽曲を安くして買いやすくすることは十分可能なはず。「3ヶ月連続リリース」「2枚同時リリース」で話題づくりを演出するのもいいのですが、販売体系を含めてもう少し消費者のフトコロ具合を考えた価格設定をしていただけるとありがたいですねぇ…。

written by noriaki amano.
上記内容はすべて掲載時点でのものです。
(ご意見ご感想などはタイトル明記の上websp@karao.comまで)


HOMEKARAO's Web Special top Weekly KARAO