KARAO's Web Special
「お悩み解消!音楽のギモン3」
〜将来、音楽CDがパソコンで聴けなくなるって聞いたけど…
2002/1/28掲載

今週は特集として「音楽のギモン」をお届け致します。雑誌やテレビでありがちな企画ではあるのですが、カラオのギモンは、その視点がひと味違います。 データを駆使してあなたのギモンを徹底解明しちゃいます!

<今回の質問>
将来、音楽CDがパソコンで聴けなくなるって聞いたけど…
【答】売上不振のレコード会社が苦肉の策として検討中、実現するかは不透明


◆ 年内発売予定の宇多田ヒカルの3rdアルバムは「パソコンお断り」か?
今年夏頃には、ついに「パソコンで音楽が楽しめなくなる」時代がやってくるようである。

東芝EMIは楽曲をパソコンに取り込めないよう複製防止技術を組み込んだ音楽CDを8月にも発売する。日本では初めてで、ソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)など他の大手も追随する見通し。
【日本経済新聞 2002.1.11 11面より】

CDプレーヤーでは再生できるものの、パソコンに搭載されたCD-ROMドライブやCD-Rドライブ、DVDプレーヤーなどでは再生できない「複製防止技術」が盛り込まれたCDが、2002年8月にも国内流通することになった。東芝EMIといえば宇多田ヒカルや鬼束ちひろ、矢井田瞳などの有力アーティストを多数抱えており、年内にも発売が予定されている宇多田ヒカルの3rdアルバムがこの技術を採用する可能性も捨てきれない。さらに新聞報道では、

SMEも年内に追随する方針。パソコンでは聴けないCDプレーヤー専用CDと、パソコンで聴けるものの複製はできないCDの二枚セットの発売を検討している。エイベックスも同技術の導入に前向きだ。
【同紙より】

とあり、大手レコード会社が今年揃って同技術を採用する方向で検討が進んでいるようだ。

◆ 既に海外では「複製防止技術」を搭載した市販CDが100万枚以上も
シングルCDのミリオンセールス作品が激減するなど、苦境に立たされている国内音楽市場。レコード会社は売れない理由として、CDとほぼ同じ音質のままファイルサイズを10分の1程度に圧縮できるmp3音源のネットでの違法なやりとりと、音楽CDが手軽に作れるCD-Rの2つをやり玉にあげている。

そこで生み出されたのが複製防止技術だ。パソコンに楽曲を取り込めなくすれば、mp3ファイルに圧縮することもできないし、CD-Rで音楽を作ることもできなくなるので、CD売上の不振に歯止めがかかるのでは、と関係者は期待を寄せている。

例えば、ナタリー・インブルーリアの2ndアルバム「WHITE LILIES ISLAND」は、日本国内向けに10月末にリリースされたものは普通のCDだが、ヨーロッパ市場でリリースされたものには複製防止技術が搭載されている。

この件に限らず、海外では既に多くの導入事例が報告されている。イスラエルの複製防止技術開発会社、Midbar昨年8月時点で「ヨーロッパ市場で100万枚以上のCDに同技術が導入された」と発表しているほどである。

◆ 消費者からのクレームに加えて「個人的な複製の妨害」が許されるかも微妙
ただし、この技術が一気に普及するかと言えば、そうならない公算の方が大きい。

ナタリー・インブルーリアのCDの場合、複製防止技術のせいで一部のCDプレーヤーでも再生できないことが消費者からのクレームで判明、レコード会社であるBMGが防止技術を搭載していない普通のCDと交換に応じる事態に発展した。

また、法的な問題点もある。レコード会社側が、パソコンにCDを取り込むことを「妨害」できるのかどうかである。

著作権法第30条は「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的とするときは、一部条件を除きその使用する者が複製することができる」と、著作権に一定の制限をかけ、消費者の権利を保護している。これに抵触する可能性も十分考えられる。

◆ CD売上もレンタル回数も減少し違法ダウンロードが急増する最悪のシナリオも
さらに気になるのが、複製防止技術が本当に有効なのかどうかである。DVDコンテンツの保護を目的に導入された複製防止機構「Content Scrambling System(CSS)」は、同技術を解除し複製ができるというプログラムがネット上で出回ってしまった。音楽CDについても、これと同じことがいつ起きても全く不思議ではない。

CD複製防止技術を導入したことで、かえって事態が悪化することも考えられる。CDを購入しても、レンタルしてきても、パソコンを使って音楽が楽しめないなら、ネットでダウンロードしてしまおう、と考えるユーザーが急増するケースである。

複製防止技術が有効に働いているうちはネット上に違法音源が登場することもないだろうが、複製防止技術に抜け穴が見つかってネット上にファイルが氾濫したら…。最悪のシナリオが現実になった時、レコード会社側は「CD売上・レンタル回数ともに急減」という状況に直面することになるだろう。
上記内容はすべて掲載時点でのものです。
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