KARAO's Web Special
「買う前に知りたい「コピー防止CD」のすべて」
2002/03/11掲載

◆ カーオーディオやパソコンで再生できない「CD」登場
浜崎あゆみらが所属するレコード会社、エイベックス株式会社(以下avex)が2月28日、邦楽アーティストの市販製品としては初めて「コピーコントロールCD」を発売することを発表しました。 対象となるのは、3月13日発売のBoAのシングル、3月20日発売のDo As Infinityのベスト盤、3月27日発売のrhythm zoneのアルバムの3作品となっています。
http://www.avex.co.jp/ir/j_site/press/press020228.html

いよいよ発売が迫ったこの「コピー防止CD」について、CDを購入する前におさえてもらいたい部分について簡単にまとめてみました。レコード会社とのしがらみが多い音楽雑誌では書けない部分にもできるだけ触れてみました。
◆ 今回の「コピーコントロールCD」はCDによく似ているが別物の「規格外CD」
いきなり衝撃的ですが、まずは今回avexがCDとしてリリースする“コピー防止機能付きCD”が実は「CDではない」んですよ、ということから見ていきましょう。

音楽用CDは「レッドブック」と呼ばれる規格によって、その形状などが厳密に定められています。レコード会社、オーディオメーカーがともにその規格に従って音楽用CDやCDプレーヤーを作っているからこそ、どんなCDプレーヤーでも音楽用CDが再生でき、どんな音楽用CDでもCDプレーヤーで再生できるようになっています。

この「CD」の定義などに沿えば、今回のコピーコントロールCDは「規格外」ということになります。

これは、新聞記事にもなっているほどですので、間違いありません。ここに、その一部を引用します。

エイベックスが13日から順次発売する著作権保護を目指した「コピー防止機能付き音楽CD」が、CD開発元のソニーなどが定めた音楽CDの国際規格に適合していないことが7日分かった。エイベックスは、同規格準拠を示す「コンパクトディスク・デジタルオーディオ」のロゴマークをハズして販売する異例の措置をとる。 同社は「一般名詞化している」として、CDの名称は使う方針。ソニーは「(通常の)CDとは別物である以上、消費者が誤解しないよう分かりやすく表示すべきだ」と指摘している。
【産経新聞 2002.3.8 29面より】 http://www.sankei.co.jp/news/020307/0307kei084.htm
◆ あなたがお持ちのCDプレーヤーで再生できる保証がない超ハイリスク商品
「私はCDプレーヤーでしか聴かないから、そんなの気にならない」と思っていると、意外な落とし穴にハマる可能性があります。

avexの説明によると、今回の「コピーコントロールCD」は

・通常のCDプレーヤー、DVDプレーヤーでの再生は可能
・パソコンのCD-ROMドライブではCDの再生はできない。ただし、Windowsパソコンでは、エクストラトラックに収録された“別物”が再生できる
・現段階では、上記に関してMacintoshパソコンには非対応。MacOSがダメなのだから、当然他のOSについても非対応。


となっています。

この時点で、パソコンのCD-ROMではCDをそのまま聴くことは不可能で、Windowsパソコンについては特例として別途対応してあります、というスタンスが明確になりました。さらに注意しなければいけないのは、

・MP3再生対応CDプレーヤー及びCD-ROM再生方式を採用するカーオーディオでは一部再生されない機種もある

と書いてあることです。「一部再生されない機種もある」と書いておきながら、どの機種で再生でき、どの機種ではできないのかが現時点では明示されていません。

最近の高機能コンポなどには「音楽レコーダー機能」が搭載されたものが少なくありませんが、これも厳しいと考えるのが妥当でしょう。

さらにツッコミを入れるとすれば「通常のCDプレーヤー」が何を指しているのかもハッキリしていないので、結局買ってみなければ再生できるかどうか全く不明な、リスクの高い商品になっています。
◆ 「規格外CD」を再生しても大丈夫?CDプレーヤーの取扱説明書を再確認せよ
冒頭で産経新聞の記事を引用しましたが、それによると今回のCDには「コンパクトディスク・デジタルオーディオ(CD-DA)」マークが付かないようです。「CD-DA」マークというのは、「COMPACT DISC DIGITAL AUDIO」をあらわすもので、「disc」という文字が大きく表示されたおなじみのものです。イマイチ思いつかない方は、下記サイトを参考にしてください。

▼日本コロムビア「ロゴマーク集」
http://www2.columbia.jp/press/designtemp/logotemp.html

このマークがついていないとなると、あなたがそのCDをCDプレーヤーで再生する前に絶対確認して欲しい項目があります。

CDプレーヤーの取扱説明書を見て頂ければ分かるのですが、たいていの説明書には「CD-DAマークが入ったものをご使用下さい」「CD-DAマークが入ったものなどIEC規格に合格したものをご使用下さい」といった但し書きがあるはずです。

マークがついていないCDを再生することは、取扱説明書を無視する行為であり、これによってプレーヤーが故障したとしても「不適切な利用による故障」とみなされ、無料保証期間であっても無料での修理が受けられなくなるおそれがあります。CD-Rで作成したCD同様、再生したことで無料保証期間をムダにするようなことがないよう、再生時には十分配慮する必要があります。
◆ 音飛び機能が使えない? MD高速ダビングもムリ? 様々な問題が一挙噴出
avex側が「今回発売するCDは、こんなのですよ」とサンプルディスクを作って、自分のプレーヤーでの再生ができるのかどうか確認できる手段を確保してくれれば大問題にはならないのですが、それがないために様々な問題が噴出しています。

ここでは、インターネット上での動きを追うことで、問題点を確認していきましょう。

まず、代表的なのが「avexのコピーガードCDに強く反対を主張するページ」です。

このページの趣旨は「(抗議の意思も含め)コピーコントロールCDのより詳しい内容をavexに問い合わせるべきでしょう」というものですが、質問内容自体が非常に示唆に富むものになっています。

・ポータブルCDプレーヤーで音飛び防止機能は使えるのか?
・家庭用ゲーム機で再生できるのか?
・MDの高速ダビング機能は使えるのか?
・パソコンを経由する「NetMD」へのダビングはどうなるのか?
・再生できないプレイヤーの情報などはどこで確認すればいいのか?


また、lark_u2氏が運営するサイトでは、直接avexなどに電話で問い合わせた際の担当者とのやりとりが聞けるようになっています。

▼Avex社、再生機器発売会社2社へ一般消費者が電話で問い合わせた内容 http://www.geocities.co.jp/SiliconValley-SanJose/4468/

詳細は実際に聞いて判断して頂きたいのですが、avexの担当者が「音飛び防止機能については未検証」などと平気で言ってしまうところを見ると「avexって、ろくにテストもしないで発売しちゃってるなぁ」と思えてしまいます。
◆ 素朴なギモン「本当にコピーできないの?」 実は、できちゃうんです…
ここまで来て、ふと湧きだしたのが「本当にコピーできないの?」という素朴なギモン。実は、一定の環境下では普通のCDのようにコピーできる場合もかなりあるようです。

実際にコピー防止CDと格闘し、CD-Rに焼く模様をレポートしているサイトがかなりあります。

▼CD-R実験室
http://homepage2.nifty.com/yss/

ただし、著作権法の絡み(私的使用による複製は可能という部分と、技術的保護手段の回避による複製は禁止という部分での判断の揺れ)から、今回のCDをコピーすることが著作権法違反になるおそれもありますので、むやみにコピーしないようにした方が賢明でしょう。
◆ クレームが殺到すれば「コピー防止機能なし」CDへの交換、という可能性も
最後に、今後の動きについて考えてみましょう。いくら理論武装をしたところで、消費者サイドからもの凄いクレームが集まった場合、avexは一企業として何らかの対応を行わなければならなくなることが考えられます。

実は、日本国内でもすでに、クレーム殺到により「コピー防止機能なしCD」への交換を行った例があります。

▼BMGファンハウス「不正コピー防止機能付きCD 交換のご案内」
http://www.bmgjapan.com/copyguard/

特に、avexの場合は東証一部上場企業であり、消費者のクレームが市場(株主)の評価を落として株価が下落するようなことがあれば、一大事ということになります。


と、いろいろと書き連ねてきましたが、カラオのスタンスとして、アーティストがショービジネスを行うためには何らかの割り切りが必要とも思っています。記事内容が少し否定的になったのは、今回のavexの発売方法は、CDが再生できるかどうかが消費者に全く判断できないような状態で「ぶっつけ本番」を行ったためです。

avex、購入者、販売店、レンタルショップ、そして他のレコード会社…。
それぞれは、いったいどのような動きを見せるのでしょうか。注目の発売日まで、あと2日。
written by noriaki amano.
上記内容はすべて掲載時点でのものです。
(ご意見ご感想などはタイトル明記の上websp@karao.comまで)


HOMEKARAO's Web Special top Weekly KARAO