「イマドキ音楽データブック」 〜ナナメに見よう!「CDランキング」 2001/04/14掲載 |
◆ ニューリリースが水曜日に偏るワケ
なぜシングルもアルバムも、揃ったように水曜日に発売されるのか…。
その答えは、ご存じの方が多いと思いますが「ランキングでわずかでも上の順位にランクインさせたいから」というのが、統一的な見方になっています。 普段目にする「週間ランキング」は、文字通り1週間のデータをもとに集計がなされる訳ですが、ランキングの代表的存在であるオリコンさんをはじめ、たいていの調査会社が「月曜日から日曜日まで」の1週間を集計期間として設定しています。そのため、このようなスケジュールになっているんですね。 「それなら、月曜日発売にすれば、月曜日から日曜日で7日分まるまるの売上が計上されるのでは」と思いたいところですが、CDの流通形態の特殊性から、そうは「問屋がおろさない」んですね。 水曜日発売の新譜の場合、はやいところでは火曜日に店頭に並びます。そのカラクリは、CDの発売日というのが「その日には絶対買える」という意味合いのもので、「その日から発売開始」ではないという部分にあります。 仮に月曜日を発売日にしてしまうと、日曜日は配送業者が休みなので商品配送ができない。そこで、月曜日に商品を確実に販売できるよう、はやければ金曜日あるいは土曜日に商品がショップに納入されることになります。つまり、金曜日や土曜日には店頭に並べちゃうところがでてくる訳ですね。そうすると、金曜日や土曜日に手に入れるユーザーと、発売日を待って月曜日に購入するユーザーに分かれてしまい、売上が分散してしまいます。 一部ショップでは「正式発売日の前々日の夕方」には商品が並べられる、というフライングしすぎなところもあるようで、そういった部分を調整した落としどころが「水曜日発売」ということになります。 ◆ 「水曜新譜」=火曜のデイリーランキングで全てが決まる
ありふれてしまった「情報化社会」というコトバですが、ミュージックシーンでは発売日のうちに新譜の出足が分かってしまうほどに、情報インフラが整っています。
というのも、水曜日発売とうたい、実際には火曜日にリリースされる新譜の売れ行き状況が、発売日である水曜日には「デイリーランキング」というカタチで出てきちゃうんですね。
デイリーランキングというのは、前日の売上を集計し、毎日発表されるものです。例えば日曜日の売れ行きは月曜日に分かる、という仕組みですね。 水曜日の新譜=火曜日に店頭に並ぶ、ということは、火曜日の売れ行きが全てのカギを握るということになります。レコード会社の皆さんが固唾をのんで見守るのがこの「火曜のデイリーランキング」ということになります。 ◆ 発売日の朝、ファンにメールで「1位」を報告?
2001年2月21日(水曜日)に発売されたDo As Infinityの2ndアルバム「NEW WORLD」は、シングル「Desire」のヒットもあり、見事カラオのランキングでも初登場で1位を獲得しました。
ところが、ファンには発売日の朝、はやくも「1位」の第一報が投げられていました。上のメールは、携帯端末にも対応した、Do As Infinityのメーリングリストを引用したものです。送信日時を見ていただきたいのですが、何と、発売日でもある2月21日の、朝8時30分の時点で「本日1位」ということをスタッフがファンに向けて報告されていたのです。 スタッフとファンがダイレクトにつながり1位獲得の「感謝」をその日のうちに表現する…。インターネットの普及があったからこそなし得たワザですね。もちろん、ファンをランキング順位で煽るやり方には賛否両論あるでしょうが…。 ◆ ランキング偏重が「一極集中」をさらに加速させる
まるで「即日開票」の結果を見ているように、日々発信し続けられるデイリーランキング。
でも、そもそもランキングとは、CDの売れ行きを示す指標=結果であって、ランキングそのものを目的とするのは本末転倒なハズ。
しかし「売れるものはもの凄く売れる、売れないものは全然売れない、その中間であるそこそこ売れるCDが少なくなった」という、最近の「一極集中」現象も、ランキングを目的化し、ヒットしているものはチェックしておきたいというムーヴメントの勢いを受けていると考えられます。 デイリーランキングがインターネットを通じてカンタンに手に入ることが、この結果と目的の履き違いを助長しているのかもしれません。 極端な話ですが、水曜日に発表されるデイリーランキングを見た上で、売れてるものだけを「機械的に」チョイスするといった購入のされ方も今後増えていくかもしれません。 ◆ そもそもランキング自体が正しくない可能性も
最後に、3月5日号の特集「誰にも分からない『CD売上枚数』」でお伝えしたように、そもそもランキング自体が正しくない可能性もあることを頭に入れておいてくださいね。
どういうこと?と思った皆さんは、下のランキングを見てください。カラオと主要調査会社2社の順位を比較したものです。
4月8日付ランキング、1位は誰?と尋ねられると非常に難しいですね。カラオが発表したものとプラネット社集計では宇多田ヒカルですが、オリコン社集計では浜崎あゆみが1位になっています。
どうもこの週はたまたまカラオとプラネット社のBest10が見事一致していますが、これをもって「オリコンが間違ってる」と言えるようなものではありませんから、そのあたりは注意してくださいね。 ファッションと化した部分もあるミュージックシーン。トレンドをいち早くキャッチしておきたいという気持ちは分からないでもないですが、ランキングというのは各社バラバラなんですね。ですから鵜呑みせず、あくまで「参考」程度にとどめて、ちょっと距離をおいてみていただけたらなぁ、と、ランキングを集計する側としては思っています。 |
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written by noriaki amano. 上記内容はすべて掲載時点でのものです。 (ご意見ご感想などはタイトル明記の上websp@karao.comまで) |
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