「イマドキ音楽データブック」 〜インターネットは「音楽業界」にプラス?マイナス? 2001/05/08掲載 |
◆ 初公開?ネットユーザーのミュージックライフとは
ケーブルテレビによる高速なインターネット回線を利用している、都内に住む大学生のTさんは大のJ-POP好き。
でも「よほどのことがない限りCDを買おうとは思わない」と断言する。特にシングルについては、見向きもしないそうだ。
しかし、ヒット曲はおさえておきたい。ではどうするのか。Tさんは「火曜日に落とす(ダウンロードする)だけ」とこともなげに話してくれた。 実際の流れはこうだ。まずはお気に入りのブックマークから、J-POPの楽曲ファイル(mp3ファイル)がタダでダウンロードできるサイトを巡回。ここで今週発売のシングルをはじめ、アルバムも気になる曲を数曲ピックアップして、ダウンロードを効率的に行ってくれるツールを利用して手に入れる。 こういうサイトの場合、楽曲のファイルを十数個に分割し「画像ファイル」といったカタチに見せかけている場合がほとんどで、ダウンロードした(みせかけの)画像ファイルを結合し、楽曲ファイルに戻す必要が出てくる。 結合自体は専用のソフトを使えば簡単だが分割方法がサイトによってまちまちなようで「複数の結合用ソフトを持っている」とTさんは誇らしげだ。 ダウンロード可能なサイトの巡回だけでは手に入らなかった場合、今度は音楽ファイルの交換を助けてくれる「ナップスター」などを使って検索を試みる。この手順を踏めば大抵の新曲は手に入れられるということだ。 最近は洋楽にも興味がわいたようで、ラジオで流れて気に入った曲はもちろん、ビルボード誌のランキングなどを参考に、まるで「試聴するかのような感覚で」ダウンロードをくり返すそうで、パソコンはジュークボックス状態だとか。 そして、お気に入りの曲は、CD-Rを使ってCDに焼き付ける。こうすることで、パソコンを立ち上げなくても、ポータブルCDプレイヤーやコンポで楽曲が思う存分楽しめるという訳だ。 …以上は全くの作り話で、実際にはTさんなど存在しません。ただ、こういうふうにインターネットを利用している人も少なからずいるように感じます。 ◆ 「CDの貸し借り」が全世界規模で可能に、見知らぬ人との貸し借りも
上の例でいくと、まず楽曲ファイルを著作権者に無断で勝手にダウンロードできるサイトというのは、違法行為に近いと思われます。最近はレコード会社側も相当意識しているようで、CDジャケットなどに「ネットワーク等を通じてCDに収録された音を送信できる状態にすることを禁じます」という文言が入っているのが一般的です。
続いて出てきた「ナップスター」ですが、こちらはどうでしょう。 以前特集した「ナップスター」とは、「ピア・ツー・ピア」ソフトの1つで、簡単に言ってしまうとインターネットに繋がっている個々のパソコン間で直接自由にファイルなどがやりとりできてしまう技術を持っています。 つまり、「CDの貸し借り」をインターネットベースに持ってきて「貸し借り」のネットワークが構築できちゃうソフトなんですね。 例えば北海道に住んでいる人が沖縄の友人からCDを借りることは、物理的に難しいですが、ピア・ツー・ピアソフトを使えば、その物理的な障壁はなくなり、沖縄の友人のPCから、直接自分のPCに楽曲を取り込む(借りる)ことができます。 もちろん、友人や知人にとどまらず、このソフトのネットワークに加入している、見知らぬ人とも楽曲の貸し借りができることになります。 ◆ 家庭ユーザーの14.3%が「CDの貸し借り」をネットで謳歌
音楽ファイルのやりとり、という面で頻繁に取り上げられる「ナップスター」は若者を中心にもの凄い勢いで広まりをみせています。米Jupiter Media Metrixが2001年2月に欧米諸国や日本など世界13カ国を調査したところによると、家庭ユーザーの実に14.3%がサービスを利用しているという結果になりました。カナダでは実に3割ものユーザーが利用をしているそうです。
ある意味タダで音楽ファイルが入手できるわけですから、当然レコード会社が黙っているわけはなく、法的手段をとっていました。これに対しナップスター側が今年3月に自主規制を行うと発表、有名アーティストは検索できないようになりつつありますが、アーティスト名や楽曲名をちょっと変えれば今でもいとも簡単にダウンロードができるようです。 また、ナップスター以外にも「グヌーテラ」や「エイムスター」など、ピアツーピアソフトは多数開発が行われており、たとえナップスターが事業を中止したとしても、ユーザーは他のソフトにスイッチングするだけで問題解決には至らないというのが大方の見方になっています。
◆ 無視できないPR効果と口コミ効果
このようにタダで違法に楽曲を手に入れることが一般化する一方で、インターネットにはPR効果や口コミ効果といったプラスの面も持ち合わせていることは忘れてはいけない部分です。
実際、倉木麻衣やB'z、ZARD、愛内里菜などが所属する「ビーイング」グループは、楽曲を圧縮することでインターネット上でのやりとりを容易にした「mp3ファイル」の配信を手がける「mp3.com」との提携を先日発表しました。 タダで楽曲の一部を配信することで、多くの人に楽曲に触れてもらい、ユーザーを喚起するねらいがあるようです。 ◆ 敵か味方か、答えはいまだ見いだせず
今や、どこのレコード会社サイトも「試聴」や「プロモーションビデオの視聴」ができる環境を整えています。これも、CDの販促であることは間違いありません。
「ナップスター」発祥の地、アメリカではCDの売上が減少せず逆に増加したという報告もあり、「ナップスター」によってCDが売れなくなった=レコード会社側に損害を与えた、と断定することはできないのが現状です。 インターネットは音楽業界にとって「敵」なのか「よきパートナー」なのか、結論はまだまだ見えてきていないようです。 |
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written by noriaki amano. 上記内容はすべて掲載時点でのものです。 (ご意見ご感想などはタイトル明記の上websp@karao.comまで) |
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