KARAO's Web Special
「お悩み解消!音楽のギモン2」
〜「CDが売れなくなった」ってホント? 売れなくなったワケは?
2002/1/14掲載

今週は特集として「音楽のギモン」をお届け致します。雑誌やテレビでありがちな企画ではあるのですが、カラオのギモンは、その視点がひと味違います。 データを駆使してあなたのギモンを徹底解明しちゃいます!

<今回の質問>
「CDが売れなくなった」ってホント? 売れなくなったワケは?
【答】2001年10月はCD売上が2年前の半分以下に、買う人も買う頻度も激減し単発型・局地的ヒットが増加したのが主因


◆ ミリオンセールス作品が激減した2001年、10月はCD売上が2年前の半分以下
2001年の年末にお届けした2001年の年間ランキング。売上が100万枚を突破したミリオンセールス作品は、シングルが4作品、アルバムが17作品という結果になりました。2000年のミリオン作品数と比較すると、シングルが11作品、アルバムが3作品の減少を記録。アルバムについてはベスト盤という奥の手があったため作品数は小幅な減少にとどまりましたが、シングルは極端に売れ行きが落ち込んでいます。

100万枚単位で売上を叩き出す作品の減少は、市場全体にも大きな影を落としています。1999年上半期のCD売上を10000として、CD市場の規模を推定する独自指標「カラオmark」を見てみると、2001年下半期の平均は6408。これは、99年上半期に比べ64%しかCDが売れていないということになります。

浜崎あゆみや宇多田ヒカルなど主役のリリースがなかった2001年10月には、過去最低の4676まで低下。2年前の半分も売れない、という厳しい現状が浮き彫りになりました。

◆ 売れない理由としてもっともらしい「インターネットの普及」、でも…
売れなくなったことは分かった。じゃあ、なぜ売れなくなったのか──。

よく言われているのが「インターネットが普及し、ネット上から違法にダウンロードする件数が増えたから」というネット悪者説。一見するともっともらしいが、ネットによるファイル交換の発祥の地、アメリカでのアルバム売上は前年比で3%の減少(サウンドスキャン社調べ)にとどまっている。TSUTAYAを代表としたレンタル文化の強弱の差はあるだろうが、いずれにしろネット悪者説だけでは説明がつかない

ではいったい何が理由なのか。異論反論が出ることは承知で、敢えて分析してみたい。

◆ 「買う人」が減り、「買う頻度」も減るスパイラル状態に陥ったため
その答えとしてはまず、「買う人」が減って、さらに「買う頻度」も落ち込んだことが挙げられます。当たり前過ぎる理由ですが、結構大きなポイントだと思いますのであらためて確認していきましょう。

90年代にミリオンセールス作品が連発したのは、カラオケブームなどでコアな音楽フリーク以外のライトユーザーもCDを手に取ったことがその大きな要因でした。また、小室哲哉が安室奈美恵や華原朋美を、小林武史がMY LITTLE LOVERをと言った具合に「プロデューサーブーム」がおき、GLAY・ラルクによる「バンドブーム」と相まって、業界全体に誰でも分かるある種のトレンドがあったことも大きいと思われます。大きなトレンドがあると何がヒットしているのかライトユーザーに分かりやすく、その安心感から買いにつながったと言えます。

2000年に入ると、Misiaや宇多田ヒカル、倉木麻衣などの「歌姫」がトレンドの牽引役を果たすと同時に、「未来日記」効果がサザンや福山雅治をタイアップ型ヒットへと導きました。

ところが、2001年に入ると今までのメガヒット量産システムは使い物にならなくなります。カラオケブームは沈静化、これといったトレンドもなく、逆にインディーズが隆盛してライトユーザーには音楽界が分かりにくくなったのかも知れません。さらに、買わずにレンタルに走ったことも「買う人」を大きく減らしました。

「買う頻度」が減少したのはベスト盤の乱発が最大の原因。リリースしないだろうと思われたアーティストがことごとくベスト盤を発売したことで、シングルの買い控えが顕著になったのでしょう。ベスト盤に限らず、オリジナルアルバムもシングルを多数収録することが当たり前になっており、これもシングル買い控えに拍車をかけているように見えます。

◆ 単発型ヒット:認知度があれば売れた時代に終わりを告げるシビアな現状
続いて、ランキングに起きた異変から不振の理由を探っていきましょう。

1つ目のキーワードは「単発型ヒット」になりつつあるということ。一昔前であれば、いったんブレイクしたアーティストは、勢いがついてその後の作品でもある程度の売上が見込めました。

小柳ゆきを例に取れば、「あなたのキスを数えましょう」でブレイクしたことで、その次の作品「愛情」が最高位3位、「be alive」では初の首位獲得、といった具合に波に乗っています。その他、the brilliant green(「There will be love there」→「そのスピードで」)や平井堅(「楽園」→「LOVE OR LUST」)などもこのパターンに当てはまるでしょうか。

こういう前提があったからこそ、レコード会社はドラマやCMなどのタイアップを使ってアーティストの認知度を高めるための「投資」を行ない、ヒット作の次の作品やアルバムで「回収」を行なうことができました。

ところが、2001年はこのパターンが効かなくなりました。夏から秋にかけて「secret base」が超ロングヒットを記録したZONEも、その次の「世界のほんの片隅から」は目立った動きを示しませんでした。ZEEBRA「Neva Enuff」などもそうでしょうか。

◆ 局地的ヒット:初登場は上位でも、2週目には急落するパターンが目立つ
固定ファン層が発売と同時に購入することから初登場順位は高いものの、その他の層には相手にされず、登場2週目には順位を急落させる作品群があります。そう、もう1つのキーワードが局地的ヒットです。2001年のシングル作品では例えば

嵐「君のために僕がいる」1位→13位
SOPHIA「進化論」2位→15位
hyde「Angel's tale」2位→12位
倉木麻衣「Can't forget your love」2位→11位
松浦亜弥「100回のKISS」4位→18位

などが挙げられます。しっかりとしたファン層をもつアーティスト特有のチャートアクションですが、カラオのランキングデータをきちんと分析したところ、局地的ヒットに関する意外な結果が見えてきました。

◆ 初登場Best10入り作品の半数以上が2週目にはBest10圏外に消える
▼ シングル初登場Best10入り作品の「2週目」順位
10位以内11位〜20位21位〜30位圏外
1997年84.9%11.6%3.5%0.0%
1998年83.5%13.0%3.5%0.0%
1999年55.0%39.2%5.8%0.0%
2000年50.3%30.6%15.3%3.8%
2001年46.7%34.4%12.3%6.7%

上の表は、カラオの週間ランキングで10位以内に初登場した作品が2週目に何位にランクインされているかを調査したものです。

例えば、1997年の場合、初登場でBest10入りした作品の84.9%が、次の週もBest10圏内にランクインしているという結果になりました。

で、注目して欲しいのが2001年。何と、2週目にBest10圏内にとどまっていられる作品が46.7%と、半分にも満たないことが分かりました。

さらに、2週目にはBest30圏外へと急落する作品も全体の6.7%に急増しています。もちろん、シングルのリリースペースが加速したことや、浜崎あゆみの「the other side TWO」のような完全受注限定生産リミックス盤が数多くリリースされたこともこのようなチャートアクションを示す作品の増加の要素の1つとして考えられます。

しかし、全体的なヒットにつながらず、内輪だけで盛り上がる局地的ヒットにより初登場順位記録だけがむなしく残って終わり、という作品の増加傾向が顕著なのも揺るぎのない事実。

シングルセールスの不振は、アーティストベースから曲ベースへのシフトが起きていることがその最大の原因のような気がします。なにしろ、「単発型ヒット」はアーティスト単位でCDが買われる時代から曲単位でシビアにチョイスされる時代になったことの象徴ですし、アーティストのファンを数多く集めて売る戦略である「局地的ヒット」にはほころびも見え始めているのですから。
上記内容はすべて掲載時点でのものです。
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