2002年版「レコード会社の儲け方」 〜今儲かっているレコード会社とその儲け方、グラフで教えます!〜 2003/01/27掲載 |
CD不況が加速した2002年のミュージックシーン。メジャーレコード会社の多くがCCCD(コピーコントロールCD)導入による“違法コピー”撲滅に乗り出した一方、そんな技術に頼らず曲のクオリティーだけで勝負するインディーズメーカーが隆盛を極めたのも特徴的でした。
もちろん、元ちとせやMINMI、キンモクセイ、氣志團、一青窈など、2002年も数多くのアーティストがブレイクし、シーン全体が活性化したのは言うまでもありません。 そんな2002年、各レコード会社はどのような経営を行ってきたのでしょうか。また、どこが「勝ち組」となったのでしょうか。 カラオでは、2003年1月に発表した「年間シングルランキング」「年間アルバムランキング」から、2002年のレコードメーカーシェアを集計、その実態に迫ります。 *このページに記載しているデータは、シングルおよびアルバムの売上をもとにしています。レコード会社は、このほかDVDやVHSなどの商品、ライヴチケットなど様々な形で売上をあげておりますが、そのような情報は一切考慮されておりません。その点には十分ご留意ください。 ◆ 大手寡占に若干の変化が? 上位陣のシェアが低下した2002年
2002年1月から12月までのデータから集計した「2002年 Active maker」の結果をまとめたものが上のグラフです。音楽業界のシェアトップとなったのは、エイベックス・トラックスの13.52%。2位は東芝EMIで、レーベル別ではこの2強が上位にしっかりと位置しました。ただし今回は「2強が市場全体の4分の1」を占める状態に変化があらわれました。2強のシェア合計は23.89%で25%を下回る結果に。また、上位5レーベルの合計も46.63%にとどまり、半数を切っています。
2002年上半期のデータでは2強の合計は28.2%、上位5レーベルの合計は50.2%でしたので、それぞれ低下傾向にあります。これは、6位以下のレーベルが頑張った証拠。インディーズレーベルの台頭もあわせて考えれば、この流れにも納得がいくかと思います。 ◆ 2002年はエイベックス・グループが総合トップ、ただしソニーグループも猛追中
毎回チェックしている「業界最大手はソニーかエイベックスか」ですが、2002年は上半期に続き通年でもエイベックスが首位をキープする結果となりました。
ソニーミュージックグループ全体のシェアは、8位のソニーレコードを筆頭に、DefSTAR RECORDS(10位)、ソニー・ミュージックジャパン インターナショナル(11位)など15.49%。 一方のエイベックス・グループは、1位のエイベックス・トラックス、19位のRhythmedia tribe、22位のカッティング・エッジなど16.48%。エイベックスがトップとなっています。 ただし、両者の差が急速に小さくなっているのも見逃せない事実。2002年上半期時点と今回を比べると、まずシェア差は3.1%から0.99%へと縮小。しかも、エイベックスグループがシェアを1.3%ほど減らしたのに対し、ソニーグループは0.8%ほど増やしています。 2003年は、既にソニーグループ(DefSTAR)のCHEMISTRY「Second to None」が150万枚のセールスを突破。エイベックスグループの浜崎あゆみ「RAINBOW」も既に170万枚を突破しているが、そのうち100万枚近くは2002年12月に売り上げられており、その分は2003年にカウントできない(その分、今回の調査に組み込まれている)という要因もあり、ソニーグループが首位を奪回する可能性も十分に考えられます。次回発表に目が離せなくなってきました。 さて、それでは上位メーカーがどのように儲けているのか、市場シェアが5%以上のメーカーに絞って細かく見ていきたいと思います。 *以下のグラフでは、メーカー内シェアが3%以上のアーティストのみ表記しています。コンピレーション盤などは「Various Artists」として単一集計しています。 【1位】エイベックス・トラックス
エイベックスの浜崎あゆみ依存傾向強まる、上半期の34.1%から下半期は38.2%に急上昇
レーベルごとに集計して決定したメーカーランキングトップは、エイベックス・トラックスに。グループ別でもソニーミュージックグループを抜き去り首位となり、その地位を確固たるものにしたと言えそう。CD売上は400億円を突破しています。
グラフで、2002年も浜崎あゆみが同社の稼ぎ頭であることが明確になりました。2002年全体で、彼女の売上が同社の売上に占める割合(メーカー内シェア)は34.91%に。ただし、2002年下半期(7月から12月まで)の浜崎あゆみ依存率は38.24%に。2002年上半期の依存率は34.1%だったので、4%ほど依存傾向を強めたことになります。 メーカー内シェア2位のhitomiはベストアルバム「SELF PORTRAIT」が62.9万枚を記録したことが、4位のDo As Infinityもベスト盤「Do The Best」が83.0万枚に達したことが売上アップの大きな要因。つまるところ、2002年の同社は「あゆ」と「ベスト盤」が売上の大きな柱だったということです。 ヒット曲の収益で新人を育てる“音楽の創造サイクル”に影響があるという理由で、同社が最も積極的に導入した「コピーコントロールCD」ですが、2002年のデータを見る限り「創造サイクル」で新人が育つ気配はありませんでした。本当に違法コピーだけがCD不況の原因であるなら、CCCD導入で目に見えた形で売上の改善が起きてもおかしくはないはず。数字の上からそのような傾向が一切見られなかったわけで、“音楽の創造サイクル”がCCCD導入のための単なる言い訳だったのではないかとも思えてしまいます。 2003年の同社ですが、2ndアルバムを発売するBoA(8.81%)がどこまで伸びるか、またニューカマーとしてはタッキー&翼(1.68%)、day after tomorrow(1.57%)が注目か。 【2位】東芝EMI
宇多田ヒカル依存率は39.5%の東芝EMI、女性ソロ3人が安定的なセールス記録
1位のエイベックス・トラックスには及ばないものの、1年間で310.7億円を叩き出した東芝EMIが2位に。2002年上半期時点では、340万枚を突破した宇多田ヒカル「DEEP RIVER」発売の影響で宇多田ヒカルのメーカー内シェアが48.8%にも膨れあがったが、通年ベースでは40%を下回る39.52%に。
東芝EMIの場合、女性ソロアーティスト3人が安定的なセールスを記録したのが特徴。鬼束ちひろは「This Armor」が50万枚、椎名林檎は「唄ひ手冥利〜其ノ壱〜」が40万枚、矢井田瞳も「i/flancy」が40万枚弱の売上を記録。椎名林檎はカバーアルバムだが、残る2作はベスト盤ではなくオリジナル盤。アルバムの中でもオリジナル盤は売れにくくなったと言われるミュージックシーンにおいて、安易にベスト盤に依存しない姿勢は高く評価したいところ。 2003年は、昨年メジャーデビューした氣志團(2.14%)や、PE'Z(0.93%)、ACIDMAN(0.71%)、GO!GO!7188(0.56%)、さらに175Rなどブレイクが見込まれるアーティストがたくさん控えており、このあたりの活躍にも期待がかかります。 【3位】ユニバーサルミュージック
ユニークな企画ものコンピ盤が好調なユニバーサル、EGO-WRAPPIN'の躍進もあり3位に
2002年上半期時点で6位だったユニバーサルミュージックが、2002年総合ランキングで3位に急浮上してきました。その大きな原動力がコンピレーションアルバム。
「WOMAN 3」が26万枚、「BEAUTY」が12.9万枚、「TEARS」が11.4万枚と軒並み好調。さらに、企画モノの「THE BLUE HEARTS 2002 TRIBUTE」「Sincerely...〜Mariya Takeuchi Songbook〜」「全国ハモネプリーグLIVE! Vol.3」はいずれも売上ベースで2億円を突破しています。 下半期に数字を大きく伸ばしたのがEGO-WRAPPIN'。2002年7月に発売された「Night Food」は30万枚を突破、2001年11月リリースのシングル「〜Midnight Dejavu〜色彩のブルース」もロングヒットを記録しており、2002年だけで15万枚が売れています。 また、小澤征爾関連作品も目立っています。グラフにもあるとおり、小澤征爾&ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団が5.10%のシェアを獲得。小澤征爾、サイトウ・キネン・オーケストラのシェアも加えると5.80%となります。 【4位】ビクターエンタテインメント
桑田佳祐効果は絶大!2002年下半期、同社の売上の半分は彼が稼いだ計算に
グラフから、LOVE PSYCHEDELICO、Dragon Ash、SMAP、19など多くのアーティストがコツコツと売上を出していることが読みとれるビクターエンタテインメント。ただし、稼ぎ頭は桑田佳祐でした。
ベスト盤「TOP OF THE POPS」が139万枚、新作「ROCK AND ROLL HERO」が62万枚、シングル「東京」が55万枚と軒並み大ヒット。2002年下半期のレーベル内シェアは実に49.59%にも達しており、下半期の同社の売上の半分は彼がもたらしたという結果に。 2003年は、夏川りみ(2.97%)、麻波25(2.47%)、MINMI(2.02%)、くるり(1.85%)などに注目したい。 【5位】BMGファンハウス
グラフを見れば稼ぎ頭は一目瞭然、2枚のベスト盤とコンピ盤が売れまくり5位に
レコード会社の移籍(BMGファンハウスから、エイベックスへの移籍)にともなって発売されたMISIAのベストアルバムが180万枚、さらに小田和正のベスト盤も175万枚を記録、この2人だけで同社の売上の実に51.25%を占めています。
また、コンピレーションアルバムでは「kiss〜for million lovers〜」が邦楽コンピにもかかわらず100万枚近い異例のヒット。「FINE−TV HITS and happy music−」が72万枚、「kiss〜dramatic love story〜」も23万枚を記録しています。 2003年は、2002年の洋楽アルバムでNo.1ヒットとなったアヴリル・ラヴィーン(3.95%)をはじめ、orange pekoe(3.75%)、キンモクセイ(2.73%)に注目。 【6位】ワーナーミュージック・ジャパン
「The 80's」「MOVIE HITS」などコンピ盤が好調な同社、RIP SLYMEが22.4%占める
洋楽コンピレーションアルバムを数多くヒットさせている同社。2002年は「The 80's」の40万枚を筆頭に、「MOVIE HITS」が29万枚、「Love Lights 3」が25万枚、「link」が22万枚を突破。
その一方、アルバム「TOKYO CLASSIC」が94万枚と大ヒットしたRIP SLYMEのメーカー内シェアも22.42%となっています。 【番外編】ソニーミュージックグループ
中島美嘉、元ちとせなど新人発掘に成功!2003年最も期待できるメーカーか?
2002年上半期の総評でカラオが「既に活動中止したTommy february6が稼ぎ頭という事実が物語る、コアアーティスト不在の“惨状”」と酷評したソニーミュージックグループ。ただ、その総評で下期以降に期待がかかるとして挙げた元ちとせや中島美嘉が予想通りのヒットに恵まれたことで、シェアが急伸しました。
2002年のソニーミュージックグループを背負って立つ存在にまで急成長したのが中島美嘉。女性ソロアーティスト全盛時代、浜崎あゆみや宇多田ヒカル、倉木麻衣、MISIAなどのアーティスト擁立ができなかった同社にとって、この分野で成長株を持っていることは新人発掘をきちんと行ってきた証拠と言えるでしょう。 「ブリグリでやるより、ソロの方が売れる」という会社側の打算が働いたか否かはともかく、Tommy february6も期間限定だった活動の再開を宣言し2003年期待ができそう。 既に2ndアルバムが150万枚を突破したCHEMISTRYがメーカー内シェアを急伸させることが見込まれるほか、ゴスペラーズやSkoop On Somebody(2.04%)、キングギドラ(1.49%)やCrystal Kay(1.30%)など気になるアーティストを数多く抱える同社は“2003年最も期待できるメーカー”と思われます。 |
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